大会長挨拶

一般社団法人日本透析医学会 関連地方学術集会
第67回長野県透析研究会学術集会

大会長上條 祐司

長野県透析研究会会長
信州大学医学部附属病院 腎臓内科科長・診療教授 血液浄化療法部長

第67回 長野県透析研究会学術集会開催にあたり

第67回長野県透析研究会学術集会のテーマは「患者firstの透析医療とは…?」とさせていただきました。
2017年末における一般社団法人日本透析医学会のわが国の慢性透析療法の現況のデータによりますと、わが国で慢性透析医療を受けている末期腎不全患者数は全国で33万人を超え、いまだその総数はピークアウトしていないのが現状です。多くの腎不全患者の予後を良くするには、現代の腎不全患者の現状や問題点を抽出し、その問題点を解決するための方策を考え、有効な対策を速やかに実施する必要性があります。
現代の腎不全患者の問題点の最も大きいものは何でしょうか…? 様々な問題点が挙げられるかと思いますが、腎不全患者の高齢化という問題は全ての問題点に関連するものではないかと思います。かつての透析患者は、慢性腎炎由来の慢性腎不全患者が多く、比較的若くて腎臓以外の臓器は比較的保たれている患者が多かったように思います。しかし、現代においては糖尿病や動脈硬化を背景とした血管障害の末の高齢の慢性腎不全患者が、透析患者の多くを占めており、透析に入った時点で様々な合併症を併発していることが多いことは、透析医療に従事する医療者は皆実感されているのではないかと思います。またそのような患者を支えるための高額な透析医療費をめぐる医療経済的側面も大きな問題です。
このような透析医療をめぐる社会的状況が激変していく中、我々医療者は柔軟に対応し適応していく必要があります。高齢化する腎不全患者の末期腎不全への進行をいかに防ぐか、腎不全患者の合併症予防や予後改善のためには何をすべきか、すでに合併症や全身状態不良の腎不全患者にとって何が最良の医療なのか、腎不全患者の尊厳を守るには何が必要なのか、等々考えるべき点は非常に多いのではないかと思います。

本学術集会では、患者firstの視点で考えた場合に、どのような透析医療が望ましいのかを真剣に議論して頂ければと思います。
結論は出なくても、そのような議論が、腎不全患者の予後改善に必ず寄与すると信じております。
透析医療に従事されている皆様におかれましては、ぜひ積極的な学会へのご参加をお願いいたします。

 

令和元年6月吉日

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